不妊に関する疾患

中医学的な不妊トラブルとは

病院の検査で子宮や卵巣のトラブルが見つかることがあります。

子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、多嚢包性卵巣…

あるいは月経に影響するホルモンの分泌不全から月経不順などが生じてくる事もあります。

高プロラクチン血症なども重要な不妊要因として忘れてはいけません。


これらは日常生活の中で積もった 「疲労」 や 「ストレス」 が血流や気のめぐりを滞らせた結果として。

あるいは冷えや水分代謝のトラブル、細菌感染による炎症から引き起こされてきます。


一度起きてしまうと生理を繰り返すたびに大きく・複雑に成長していってしまうこれらの症状改善に、「体質改善」できる漢方薬は有効な手段となります。


1.子宮に関連する病気

2.卵巣に関連する病気

3.その他の不妊に影響するトラブル


1.子宮に関連する病気

1−1.生理痛

生理痛は大きく二つに分類されます。


・生理が始まる頃から刺されるように強く痛み始めるタイプ。

・最初は痛みがないか少し痛む程度で後半にシクシク痛みが強くなっていくタイプ。


女性にとって生理とは毎月、自身の健康状態を知るための大きなイベントです。

そのイベントの中で 「痛み」 は 「トラブルがありますよ」 というサインでもあります。


毎月 「痛くなったら鎮痛剤」 と何気なく対処しているかもしれませんが、なるべくなら自然にスッキリと生理を迎え、終えられるよう体質改善をしてほしいと思います。

 

〈生理前から刺すように痛み始めるタイプ〉

中医学で痛みが起きる要因は二つです。


「不通則痛(通じていないために痛む)」 か 「不栄則痛(栄養がないために痛む)」です。


前者ではたとえば血流の滞りや気のめぐりが阻害されるために起きてくる痛みですから、強い痛みが起きる事が特徴です。

特に血流が阻害されて起きてくる痛みは 「オ血痛」 という痛みで 「針で刺されるような」 痛み方をする事が特徴です。

生理前半に起きる刺すような痛みは、まさしくこのオ血が原因の痛みです。

しかしこのオ血もまた様々な要因で引き起こされており、その発生原因に正確に対処できる漢方薬を選ぶ事で早期改善を見込めます。

〈生理後半にシクシク痛みが強くなっていくタイプ〉

先ほども記載しましたように痛みは 「不通則痛」、または 「不栄則痛」 により引き起こされます。


生理後半から痛みが強くなり、激しい痛みよりはシクシクと落ち着かない痛みである場合、これは 「不栄則痛」 タイプの痛みです。

血液の絶対量の不足、あるいは血液の質の低下や栄養成分が不足する事で引き起こされます。


根本的には不足してしまっている 「血」 や 「気」 などを補うよう漢方薬をメインに、脾胃や肺の力を改善していくよう働きかけていきます。

時には気の不足や、血の不足からオ血や痰湿が生じている事もありますので、活血や化痰の生薬を少量加えサポートする事もあります。


生理痛は他にもタイプがあります。

しかし多くの方がこの2タイプのどちらかに当てはまっている事が多く、ぜひとも改善を試みてほしいと思います。

痛みの改善には生理周期にして1~2周期が目安になります。


1−2.子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍です。


性成熟期(子供が生める年齢)の女性の多くは軽度の子宮筋腫を持っていると言われており、特に珍しい病気ではありません。

月経異常や、強度の月経痛を伴うような子宮筋腫は主に20~40歳代の女性に見つかりやすく、筋腫の大きさや個数は人それぞれ異なります。

西洋医学的には子宮筋腫の原因ははっきりしていません。

女性ホルモンの影響で筋腫が発育していくものと考えられ、生理のたびに大きくなっていく傾向があります。


子宮筋腫は、発生する場所によって大きく3つのタイプに分けられます。

最も多い場所は 「筋層内筋腫」 次に 「漿膜下筋腫」 そして最後に 「粘膜下筋腫」 です。

極まれに、子宮頸部にできるケースもあります。

〈 筋層内筋腫 〉

子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていくタイプです。

筋腫の成長に伴い子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされ、月経痛や月経時の出血が多くなります。

また下腹部を触るとしこりが感じられる事もあります。 

〈 漿膜下筋腫 〉

子宮の筋肉の外側にある膜(漿膜)にできる筋腫です。

子宮の外側に大きくなっていくため、かなり大きくなっても症状を自覚しにくいタイプの筋腫です。

外から触れて分かるほど大きくなっても痛みや月経血などに異常が出にくいため、本人は子宮筋腫と認識していない場合もあります。

〈 粘膜下筋腫 〉

子宮の筋肉の内側の膜(子宮内膜)にできる筋腫です。

発生率は少ないですが、症状は最もはっきりと現れ、かつ不妊症に確実に絡んでくる筋腫です。

筋腫が未熟な状態でも月経過多や不正出血の症状がみられ、時間経過により貧血などによる全身症状を引き起こしやすいタイプの筋腫です。

どのタイプの子宮筋腫も何らかの症状が月経や日常的に起きていることが多く、早期の判断が早期回復につながります。


以下に代表的な症状を上げておきます。

  • 月経過多(月経血の量がナプキン1枚では心もとない)がある。
  • 月経時にレバー状の塊を排泄する。
  • 時々、不正出血することがある。
  • おりものが黄色っぽい、またはにおいが強い事がある。
  • 尿失禁や頻尿を自覚する。

中医学では子宮筋腫の原因は「オ血(血流の滞り)」「気滞(気の巡りの滞り)」「強い冷え」などを考えています。

したがって治療は「活血化オ(血流を良くし血オを改善する)」や「疏肝理気(肝の働きを調節し気の巡りを整える)」を中心に考えます。


そして冷えが強い方には暖める生薬を、血流や気の巡りの滞りから熱が生じてのぼせなどを自覚するような方には生じた熱を上手に捌くための生薬を追加します。


あまりにも成長した子宮筋腫に対しては、オ血の塊を崩していくために、やわらかい塊を潰していく力を持つといわれる生薬を追加することもあります。


病院での子宮筋腫の治療では結果が早く得られる反面、薬物治療にしても手術による摘出にしても「筋腫を作ってしまった原因の治療」になりにくく、治療後も繰り返し子宮筋腫が発生してしまうデメリットもあります。

比べて漢方薬による改善では、子宮筋腫を作ってしまった体質的なトラブルを考えての改善を行いますので、改善に時間が必要にはなりますが、治療ができた後に再発する事が少なくなります。


もちろん完全な改善ができていなくても妊娠できる場合もあり、この場合それ以上の症状改善の必要がない事が多く(出産が筋腫に対しては一番の治療になります)かかる費用も少なくなります。


またオ血による他の症状、肩こりや目の疲れ、場合によっては鮫肌や偏頭痛などの改善にも効果が期待できます。

近い将来妊娠をご希望している方にとっては子宮の手術は極力避けてほしいと思います。

病院でのホルモン剤、手術などの治療を受ける前に、ぜひ漢方治療を考えてみてください。


1−3.子宮腺筋症

子宮内膜組織が子宮以外の部位において増殖・剥離を繰り返す「子宮内膜症」。

様々な部位において内膜症は発生してきますが、特に子宮を構成している筋肉の層「子宮筋層」の中に子宮内膜が浸潤し、月経周期に合わせて増殖・出血を繰り返す状態を「子宮腺筋症」と呼んでいます。


好発年齢は30代~40代といわれ、月経を重ねるごとに痛みの増悪・出血量の過多、期間の延長などが引き起こされてきます。

子宮内膜症と同様月経時の強い痛みが特徴です。


痛みの悪化要因としては寒冷・ストレス・疲労などが多いようです。

漢方では、子宮腺筋症が引き起こされてくる主な要因をオ血と考えています。

子宮を取り巻く血流や経絡の流れに寒冷やストレスなどから停滞が生じることでオ血が生じ、免疫力や体力の低下から子宮内膜症、子宮腺筋症などが発症すると考えられています。


2.卵巣に関連する病気

2−1.子宮内膜症

子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、卵巣や卵管など、子宮以外の部位で発生・増殖する病気です。


原因として有力な説は、月経として排泄されるはずの子宮内膜が逆流を起こし子宮以外の部位で癒着する、というものですがはっきりした事はわかっていません。


子宮内膜症が最も多く起こるのは卵巣、他にダグラス窩、仙骨子宮靭帯、膀胱子宮窩などです。

子宮内膜症の中で子宮筋層内に内膜が浸潤した結果生じた病変を「子宮腺筋症」。

卵巣内に子宮内膜組織が発症し、卵巣内に血液が溜まり卵巣が大きく腫れてくる病変を「チョコレート嚢腫(のうしゅ)」と呼んでいます。


癒着した子宮内膜組織は女性ホルモンの影響を受け、月経周期に合わせて増殖や剥離を繰り返します。

そして病状の進行に伴い、様々な症状を引き起こし始めます。

子宮内膜症の症状で特徴的なものを以下に記載します。


◆「強い生理痛」

生理のたびに痛みが強くなっていくこともあります。

鎮痛剤などによる止痛効果が弱く、腹痛だけでなく肛門や下腹部のほうまで痛みが放散していきます。

また、この腹痛は生理時以外、排卵期や生理前から痛むこともあります。


◆「月経過多」

一回の出血量が多く、慢性的な貧血状態を呈するほどになります。

月経の出血がだらだらと10日間以上延長したり、不正出血などで不定期に出血を認めたりすることもあります。


他に「月経時に下痢をしやすい」「性交痛」などの症状を認めることも多く、心当たりがある場合は一度、専門医の受診をお願いしています。


中医学的には「オ血(子宮・卵巣周囲の血流の滞り)」の改善をベースにします。

同時に子宮内膜症本来の特徴である炎症を抑えられるような漢方薬・生薬を配合していきます。

そしてそもそも子宮内膜を排泄できずオ血を引き起こした原因が「陽虚(自力で体を温める力が弱い)」や「痰湿(水分代謝の異常)」などにないか判別し、その方の体質、症状に応じて証を見分け対応します。


したがって活血化オ薬以外にも補陽剤や補気剤、化痰剤など複数の漢方薬を、時々の症状に応じて活用します。


私個人としては、完全に子宮内膜症そのものを改善しその後で妊娠を目指すよりも、痛みや出血過多などの症状を早い段階で改善し、消耗してしまった体力や血液、良い状態の卵子を排卵する力や月経周期の回復を促すことが優先と考えています。

一度生じてしまった子宮内膜症は完全に回復する事はまずありませんが、これらができると妊娠までたどり着ける事が多いように感じます。


いずれにせよ、強い生理痛や出血過多など気になる症状があれば一度、子宮内膜症の有無を確認される事をお奨めいたします。

もしどこかに病変箇所が見つかった場合。

病院で一時的に閉経状態を作るホルモン治療や手術などの治療を受ける事に抵抗を感じる場合。

弁証論治がきちんとできる漢方薬局にご相談ください。

必ず症状改善のお力になれるものと思います。


2−2.卵巣嚢腫

卵巣にできる腫瘍全般を卵巣嚢腫とよんでいます。

ほとんどの卵巣嚢腫は良性で、嚢腫が小さいうちは自覚症状などもないことがほとんどです。


嚢腫がこぶし大ほどの大きさに成長してくると下腹部に張りや張痛、腰痛、嚢腫の圧迫による便秘などが生じてきます。

大きさは様々のようですが、大きなものでは成人の頭ほど大きさや重さも十数kgまで大きくなるものもあります。

大きく成長してくると茎捻転を起こし、激痛や急な吐き気・嘔吐を引き起こします。

捻転による血行不良から卵巣嚢腫が破裂をする場合もあります。

このような症状が現れた場合には緊急手術が必要になります。


薬局においてもあまり大きく成長してしまっている場合、あるいは漢方薬の服用でも成長が止まらず大きくなり続けている場合には、先に手術による治療をお勧めしています。

しかし多くの卵巣嚢腫に対して、冷えや血行不良、水分代謝などを改善していくことができる漢方薬は効果があります。


病院のホルモン剤などによる治療で思ったような効果が得られない場合、または手術が適用となるような大きさではないために様子を見ておきましょうといわれた場合、ぜひ漢方薬を試して頂ければと思います。

中医学的には卵巣嚢腫はオ血・痰湿・陽虚などの症が複合して生じてきます。

弁証論治を行い、その方の体質に合わせて主となる方剤、副となる方剤を組み合わせ対応する必要があります。


また子宮筋腫や内膜症のように強い痛みなどが改善されることで症状の軽重を計れる疾患ではないため、漢方薬の服用を行っていても定期的な婦人科における検査はお勧めします。


2−3.多嚢包性卵巣

多嚢胞性卵巣とは排卵障害の一つで、卵巣の殻が様々な理由から固くなってしまい、排卵期になっても成熟卵子が卵巣から飛び出すことができなくなっている状態の事です。


この状態になると、卵巣に排卵できない卵子が列になって並んでいる状態がうかがえたり(ネックレスサイン)、血液検査では排卵期以外のときにもLHの数値が高くなっていたりします。


生理周期が異常に長い、あるいは基礎体温上においてLHサージの際の体温の上がり方が緩やかだったり、黄体期の高温維持が不安定だったりして病院で検査を受けたところ・・・という方が多いと思います。


自身では気付いていないながら、潜在的な多嚢胞性卵巣の患者さんの数は相当数に上ると考えられます。

店頭で不妊のご相談を受けていても、やはり多く見かける障害の一つです。


西洋医学的には多嚢胞性卵巣に対して効果的な治療法というものは今のところありません。

不妊治療の際には症状が軽ければ、排卵誘発剤などを利用して強引に排卵をさせてしまうやり方や、場合によっては卵巣の一部に穴を開ける手術を行うことで妊娠可能な状態をつくる治療法がありますが、どれも一時的なもので状態改善に結びつきません。


中医学では、多嚢胞性卵巣の直接的な原因は 「痰濁」 や 「オ血」 などの体に蓄積した老廃物が原因と考えています。

しかしこれらの要因はいきなり体のうちに生じるものではなく、 「脾胃」 や 「肝」 ・ 「腎」 などの代謝機能の低下などにより、水分が代謝できない、正常な血流に滞りが生まれるなどの理由から二次的に生まれてくるものです。


状態改善の上で痰濁やオ血を取り除いていくことはもちろん重要ですが、それ以上にそれらが生じてしまった体質的なトラブルをいかに効率よく改善していくかも大事なポイントになってきます。


これはあくまで私見ですが、「体に良いから」 という理由で自身の体質に合わないにもかかわらずある種の健康法を実践してしまっている方に多嚢包性卵巣などが増えているのではと考えています。

たとえば、ここ近年の 「水分を取ると血液がさらさら」 「なるべく水分を取って代謝を高める」 などのファッション誌やダイエット誌などに書かれている事を実践してしまった方。


あるいは不勉強な医師のいるクリニックでは体質を見ることもなく、むくんでいようが尿量が減少していようが誰も彼も無差別に 「水分を取りなさい」 などと指導している事もあります。

結果、自身の代謝限界量以上の水分をとってしまい、体が冷え、痰濁が生じ、多嚢胞性卵巣を発症してしまう要因を作ってしまった。


一方で特別に水分を過剰にとっている覚えはなく、また運動なども習慣的に行っていて、血流が悪いということもないのに 「多嚢胞性卵巣」 となってしまう方が時々いらっしゃいます。


近年 「多嚢胞性卵巣」 と 「インスリン抵抗性」 の間に密接な関係があることがわかってきています。

簡単に表現すれば、血液中のブドウ糖を細胞を動かすエネルギーに変えるホルモン=インスリンが働きにくいと、卵胞が十分大きく成長できない為に、排卵障害を起こすということです。

インスリン抵抗性は日本人は民族的に高い方が多く、この事も潜在的な多嚢胞性卵巣の患者さんが多いことの一因になっていると思われます。

現代の西洋化した食習慣などの影響も考えられます。

ご家族や近親者に糖尿病の方がいらっしゃる場合、あまり血糖値をあげてしまう炭水化物や糖などの多い食事は避け、食材などもGI値が低いものを覚えておくのも良いかと思います。


不妊治療に多嚢胞性卵巣の改善を合わせる場合、予算的には3万円/月ほど考えて頂いてます。


多嚢包性卵巣で卵巣にネックレスサインとよばれる複数の卵胞の成長が認められる場合、漢方薬で多嚢包性卵巣自体は改善できてもネックレスサインはそのまま残ってしまう事が多いようです。


この事から当店では、卵巣の状態を完全にもとの状態に戻す事を目標にするのではなく、多嚢包性卵巣による排卵障害の改善を目標に、妊娠しやすい体作り・体質改善を目指していただいております。


基礎体温の変化や病院での検査などから多嚢胞性卵巣が疑われる、または既に診断されている方はぜひ漢方での体質改善をお試しください。


2−4.無排卵

無排卵に関連するトラブルのお客様は多いように感じます。

それも疾患や体質的な無排卵状態より、病院の排卵誘発剤などのホルモン治療により卵巣が疲弊してしまい無排卵を引き起こしてしまった方が多いのが実情です。


西洋医学的な無排卵・無排卵月経の解説は他のホームページにお任せして、ここでは中医学的な、または店頭のお客様を通して無排卵に関してお話したいと思います。


〈 無排卵の状態 〉


ご自身が無排卵であるかどうかは基礎体温表から大体わかります。

きちんと排卵できていれば卵胞期から黄体期へシフトする際に体温が上昇する期間“排卵期”があります。

無排卵の場合、この体温の変化がなく低温期が続いた後で生理が来ます。

低温期のまま体温の変化がない、あるいは36,5℃前後の中程度の体温のまま変化なく生理が来る場合は無排卵である事があります。


〈 中医学的な原因と改善 〉


多嚢包性卵巣などの排卵が困難になる疾患から無排卵になる事があります。

多嚢包性卵巣の場合黄体化ホルモン(LH)が常時高値になる傾向がありますので血液検査でホルモンの状態を調べるとわかることが多いようです。

中医学的には「痰阻(たんそ)」「腎気不足」などと考えます。

卵巣や卵胞の周囲に排卵を邪魔する要素がたくさんある為にスムーズな排卵が行えない。

あるいは排卵をスムーズに行う為の力がない、ということです。


また排卵誘発剤などの乱用でエストロゲンの分泌力が著しく低下してしまうと卵胞が育たなくなり無排卵状態になることがあります。


上記のような理由がなくても卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)が高い場合も排卵を困難にし無排卵、あるいは排卵後に卵胞が黄体に変化できないために無排卵であった時と同じような基礎体温のグラフになる事があります。


ホルモンのアンバランスが問題になる場合、「腎陰不足」や「血虚」、「肝気鬱結」などその方によって原因が異なります。

基本的には血液や潤いの補充が出来る漢方薬をオススメする形になりますが、病院でホルモン剤治療を行った結果生じたトラブルだけは一度ホルモン剤の利用を全て休まないと回復は見込めません。

ホルモンバランスが崩れたまま病院の不妊治療を続けても良い結果は見込めませんが、年齢が高い場合は勇気のいる決断であることは確かです。


不安のある方は店頭で納得いくまでお話をお伺い頂いております。



2−5.黄体機能不全

黄体機能不全は実に多くの方に見られます。


月経周期の後半、高温期に入った後の体温の立ち上がりに日数がかかったり、36.7度以上の安定した高温期が持続できなかったりする事が主な症状です。


西洋医学的な正常な黄体期の診断基準は


○高温期の持続 9日以内

○高低の温度差 0.3度以内

○子宮内膜の厚さ 8mm以内

○プロゲステロン検査値 10ng/ml未満


となっています。

これらの条件を満たせない場合、原因となってくる最大の要因は黄体ホルモンの分泌不全です。


西洋医学での黄体機能不全の治療法は省かせて頂きますが、店頭での多くのお客様を見ていると、単純に黄体期に黄体ホルモン剤を補充服用しても、高温期の体温が黄体ホルモン剤を服用した分だけ高くなるという事はなく、中々上手く着床・妊娠とはいかない事の方が多いように感じられます。


逆に服用したホルモン剤の影響が次の月経周期まで及び、ホルモン剤治療を何周期か繰り返すと卵巣の腫れや生理周期の乱れを招く場合もあります。


ホルモン剤による治療で短期間で子宝を授かったという経験をお持ちの方は多くいらっしゃいますので、極短時間の間に試してみる治療法としては効果が高いものと思います


黄体機能不全の原因を、店頭でご相談に来られる方の基礎体温や体調全般から判断するに、卵胞の成熟不全ではないかと考えています。

元々「黄体」は「成熟した卵胞から卵子が飛び出した後で変化したもの」です。

「卵胞が十分に成熟できていない」「卵子が飛び出した後で黄体に十分変化できていない」などの理由で黄体機能不全は生じやすくなります。


LHサージ以降の数日間の体温上昇がゆっくりだと、どのタイミングで夫婦生活を持てばいいのかがはっきりしません。

また、低温期と高温期の体温差が少ないと子宮内膜が薄くなる傾向があり受精卵が内膜に着床しにくくなります。

多嚢包性卵巣等のはっきりした排卵障害がなくても、排卵しにくい体質の方は黄体機能不全を起こしやすい傾向が強く、いずれにしても基礎体温をつけてみるとはっきりその傾向が出てくる事と思います。


漢方周期療法や、体質的なトラブルをきっちり踏まえた漢方薬による体質改善のアプローチによって、月経から卵胞期における卵巣機能の改善等は大きな効果が見込めるところです。

黄体機能不全なのではないか、高温期の体温が低いのではないかと不安を抱えてらっしゃるなら、一度ご相談下さい。


3.その他の不妊に影響するトラブル

病院にかかられている方で、いわゆる”原因不明の不妊”と言われるのがこのジャンルです。

 不妊を引き起こすトラブルは何も婦人科疾患だけに限りません。

 

最も身近なトラブルの代表は”胃腸虚弱”です。

 ストレスで胃痛や下痢してしまう。

 食べるとすぐ下痢・軟便がでる。

 朝起きるときにお腹が痛い、あるいはゆるい便が出る事がある。

 食事の中でも油ものや肉類など胃に負担になるものは食べないようにしている…

 

挙げていけば他にもありますが”自分の体を十分維持できるエネルギーがなければ赤ちゃんは授からない”のです。

 胃は体に必要な血肉の材料である咀嚼された食事を受け止め、胃酸によって体が吸収できる状態まで材料を細分化する臓器です。

 腸は消化された血肉の材料を吸収し、あるいは有害物質や老廃物は便として吸収せずに通過させる腑分けの臓器です。

 これらの内臓の機能が弱くなってしまうと自分の血肉を作る材料を吸収する事が出来ない、十分な体力を備えるための材料をそろえることが出来ない体質になります。

 

自分の体力を維持するだけでギリギリの方が、元気な赤ちゃんを授かる道理がありません。

 胃腸の弱さは体の弱さと同義です。

 胃腸を強くして健康な体を作る必要があります。

 

また水分の採りすぎも不妊体質を引き起こします。

最近のデトックスブームや血液さらさらブームでよく一日に2リットルの水分を取っているという方がいらっしゃいます。

その方の体に合う水分量は果たしてそれで良いのでしょうか?

水分を採りすぎている方は特に足や手、顔に浮腫みを生じ、だるくなります。

浮腫むタイミングは夕方以降や朝起床時からなど様々ですが、自分の代謝能力以上に水分が余っているから浮腫むのです。

 

勘違いしないで欲しいのは浮腫むから不妊になるとは言っておりません。

浮腫むほど体に水分が余るという事は、血液中の水分も増えています。

水分が増えても赤血球や血小板が増えるわけではないので、血液は薄くなっています。

体の各部に栄養や体温を届ける血液が薄くなれば、内臓は十分な機能を維持できなくなります。

肺が機能低下を起こせば水のような痰が増えますし、腎臓が機能低下すれば浮腫やお小水が近くなります。

 胃腸ならあまり空腹を感じず、動いたときにぽちゃぽちゃと水音がする方もいらっしゃいます。

 子宮や卵巣なら…もうわかりますね。

 

体の水分量が適切かどうかはご自身の舌を見ればある程度わかります。

 透明感のある白いコケが薄く舌全体についていればOKです。

 

白いコケがべた~っとついていたり、厚くついていたりするのは水分過剰です。

 また体内に熱がこもっていたり水分が不足したりしてしまうと、舌が赤みを増しコケが薄くなります。

 

時々ご自分の舌もチェックして水分バランスがどうなっているのか確認してみると良いかもしれませんね。


3−1.高プロラクチン血症

プロラクチンは脳下垂体から放出され乳腺を刺激して乳汁を分泌させるホルモンです。


本来プロラクチンの血中濃度の正常値はおよそ15ng/ml以下ですが、妊娠に関係なく分泌が亢進し、乳汁分泌、無排卵月経などを起こすようになったものを高プロラクチン血症といいます。


高プロラクチン血症が生じると、特に排卵期以降の黄体の働き・基礎体温の上昇などの変化に対しブレーキがかかるようになります。


さらにプロラクチン分泌の程度が高くなってくると、場合により生理が止まるだけでなく乳汁分泌が始まる事もあります。


多くの場合、原因がはっきりとわかることは少なく、様々な要因から引き起こされる事が多い症状の一つです。


店頭でお客様のお話をうかがっている中では、一時的にでも強いストレス環境下に身をおいた事のある方に、高プロラクチン血症が多いように感じます。



中医学では高プロラクチン血症は主に 「脾胃」 「肝」 「血(けつ)」 の三つの要因が失調して生じてきます。


 強いストレスや心配事、精神的な負担が継続すると 「肝」 に蓄えられている 「肝血」が消耗され減少します。


 肝血が減少して来ると 「肝」のもう一つの働きである 「疏泄(気の巡り)」も失調を起こします。


 疏泄の失調により肝の経絡が運行している胸の脇やわき腹の辺りに張っている様な感覚、ひどいときは張痛を感じるようになります。(PMS(月経前症候群)もこの肝の失調に深く関連しています。)


 疏泄の失調により血液の正常な運行が撹乱されると月経血ではなく乳汁が溢出する傾向が強くなる。


 と考えられています。


そして血(月経血も含め)と乳汁は、どちらも食べたものが脾胃の働きで化生されたもので元は同じものから作られます。


ですから乳汁分泌の傾向が強くなってくると月経血の不足を起こし生理が止まりやすくなってきます。


また肝の失調は脾胃に対しても影響しやすく、膨満感やもたれ、便がゆるくなったり胃が痛くなったりなどの症状を引き起こします。


肝の失調はまた 「腎」 の精の減少にもつながってきます。


「精」 の減少は生殖機能の低下に関連してきますので、卵子が成長・排卵できない「無排卵」や基礎体温の二層線の消失に関連してきます。



漢方薬での症状改善には 「回乳作用」 を持つ生薬が入った方剤を中心に、その方ごとに弁証論治を行い決定していきます。


多くの場合、すでに病院でプロラクチン値改善のホルモン剤を服用されている中でのご相談になりますが、そのままホルモン剤と併用いただいても問題はありません。


ホルモン剤により積極的なプロラクチン値の低下と、漢方薬による随伴症状や体質的なトラブルの改善などにより基礎体温などの変化もより早く正常化していきます。


特に黄体期に入る際のLHサージ(体温の高温期への移行)がスムーズに行かないなどでお悩みの方は一度プロラクチン値を疑ってみると良いかもしれません。


3−2.子宮頚管粘液の不足

子宮頚管粘液は、おりもの、帯下ともいわれている半透明、やや粘り気のある粘液です。


普段あまり意識されている女性は多くないかもしれませんが、おりものの状態は卵胞・卵子の質の良さとも比例してきます。


また 「子宮頚管粘液」 の呼び方が示すように子宮の入り口部分に質の良い粘液が十分量あれば、子宮内に精子が通っていくための道が広く確保できる事から、妊娠しやすいかどうかの指標にもなります。


一般的に、月経の後、少しするとおりものの分泌が増加してきます。


排卵前後において分泌量はピークに達しますが、この際に「卵白様」で「半透明」の粘液が分泌されていればまず問題ありません。


また中医学では7・5・3の定義というものがあります。


生理の日数が7日であれば排卵前後におりものが特に分泌される期間は5日前後。


生理の日数が5日であればおりものが分泌される期間は3日程度。


生理の日数が3日であればおりものが分泌される期間は1日。


もし生理日数と比べて、子宮頚管粘液の分泌日数がこの日数以下だったり、まったく分泌される日が無いようであれば、粘液量が減っている可能性があります。


また、やたらと水っぽい多量のおりものが見られる。


あるいは黄色味の強い、やや匂いが強いおりものが見られるなどの場合、子宮頚管粘液の分泌にトラブルが隠れていることが想定されます。


これらのトラブルに対し、西洋医学的には特効薬的な対処法は今のところありません。


栄養学的に見てやや不足している傾向がある方には栄養療法を試みてある程度の効果をあげている程度で、しかも全ての方がこの方法で改善できるわけではありません。


中医学的にはおりものの異常は主に「腎陰」のトラブルと考えています。


「腎陰」とは漢方で言う「腎(西洋医学の腎臓ではありません)」という臓の中に蓄えられている体本来の潤い・瑞々しさの事です。


腎陰が不足すると、おりもの以外にも「冬場、肌が白い粉を吹くほど乾燥しやすい」「のどや口が渇きやすい」「目や鼻などの粘膜が乾燥しやすい」などの水分不足の症状が身体各所で見られるようになります。


腎陰の不足が進んでいると、「寝汗」「睡眠時に手足がほてる」「日常的にのぼせやほてりがある」などの自覚症状を感じることもあります。


腎陰の不足がおりものの不足にもつながってくると考えられているので、おりもの分泌量が少ない方には主にこの腎陰を補う漢方薬を中心にご利用いただくことになります。


また腎陰を補う漢方薬はどれも胃腸に負担をかけることが多いので、自覚的に「私は胃腸が弱い」と感じられている方の場合、一回の量を減らしたり、消化を助け胃腸の働きを改善する漢方薬を併用したりする必要があります。


一方、おりものが水っぽい場合は卵巣・子宮周辺の「冷え」や、「痰湿」といって水分代謝が悪くなっていることが想定されます。


この場合はその方ごとの弁証論治に従い、卵巣・子宮周辺を暖めたり、血流や水分代謝を改善したりすることでおりものの質を改善していきます。


日常的な生活習慣の中に冷えや痰湿の原因が隠れている場合もあるので、生活習慣のチェックと改善点の確認も忘れてはいけません。


最後におりものの黄色味が強く匂いも強い場合です。


漢方的には体内に必要以上の熱が生じている場合に見られるトラブル、という理解が一般的です。


しかしこの「熱」が、感染症などから引き起こされている炎症= 「実熱」 なのか、あるいは腎陰虚や肝鬱化火などから生じている 「虚熱」 なのかで用いる漢方薬はまったく違ってきます。


時々「熱」というと何でもかんでも「黄連解毒湯」を処方する病院がありますが、弁証もせずにこの処方を用いれば体調はさらにトラブルを極めていく場合も考えられます。


また「熱」に「痰湿」が絡んでいる場合も多く見受けられますので、対応はきちんと弁証論治を行える漢方薬局の先生などにご相談して頂くほうが無難だと思います。


いずれにしてもおりもののトラブルに対して漢方薬ほど効果を早期に実感していただけるものは他にないと思います。


お困りの方はぜひ一度、お試しになってみてはいかがでしょう。


3−3.免疫性不妊(抗精子抗体)

抗精子抗体は、何らかの原因で女性の頚管粘液や膣、卵管内に男性の精子を攻撃する免疫が発現してしまう症状です。


入ってきた精子に対して免疫が攻撃を仕掛けてしまいますので、卵子の元まで無事にたどり着く精子は激減、あるいは消滅してしまい自然妊娠できる確立は大変低くなってしまいます。


精子に対する反応以外では自覚できる症状は何もありませんので病院で検査して初めて分かります。


検査はヒューナーテストや血液検査で分かりますので気になる際には受けておくのもよいかと思います。


抗精子抗体の原因は西洋医学的にも中医学的にもよく分かってはいません。


免疫的なものですので免疫の感受性が高い方(いわゆるアレルギー体質?)に起こりやすいとか、性交時に子宮や卵管、膣内に出血がある事で精子に対してマクロファージが異物認識を行ってしまう事が原因だとか諸説あります。


出血に関わるとすれば子宮内膜症や子宮筋腫などをお持ちで、不正出血を伴う方に起こりやすいような気もしますが、そういった傾向もないようです。


抗精子抗体がある場合、一般的には「抗体価」が低ければ(5%以下)人工授精、「抗体価」が高ければ(20%以上)体外・顕微受精を行います。