中医学的な不妊トラブルとは

 

子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、多嚢包性卵巣…

あるいは月経に影響するホルモンの失調から生理不順やひどい生理痛が生じる事もあります。

高プロラクチン血症や月経前症候群(PMS)なども不妊の要因の一つです。

 

これらは「疲労」「ストレス」「不摂生」が血流や気のめぐりを滞らせて、あるいは冷えや水分代謝の失調を起こした結果生じてきます。

また細菌感染による炎症からも疾患は引き起こされてきます。

 

一度起きると生理のたびに複雑に成長するこれらの症状改善に中医学漢方は有効な手段となります。


1.子宮に関連する病気

2.卵巣に関連する病気

3.その他の不妊に影響するトラブル


子宮に関連する病気

1−1.生理痛

生理痛と一言で表現しても

子宮筋腫や内膜症などの疾患で強い生理痛が生じるタイプと、

疾患などのトラブルに関係なく強い生理痛を自覚するタイプがあります。

 

ここでは疾患に関連しない生理痛に関して述べさせて頂きます。

 

生理痛は痛みの起こり方から大きく二つに分類されます。

 

・生理が始まる頃から強く痛み始めるタイプ。

・最初は痛みがないか少し痛む程度で後半にシクシク痛みが強くなっていくタイプ。

 

生理は自身の健康状態を知る事ができる大きなイベントです。

強い「痛み」はたとえ検査上は疾患がなかったとしても「トラブルがありますよ」というサインでもあります。

毎月「痛くなったら鎮痛剤」と何気なく対処しているかもしれませんが、本来生理は痛みがないのが普通です。

自然にスッキリと生理を迎えトラブルなく終えられるよう体質改善をしてほしいと思います。

 

生理開始から絞られるように痛む生理痛

疾患などがないにも関わらず生理痛が強い時、中医学で痛みを起こす2つの要因を中心に考えます。

 

「不通則痛(通じていないために痛む)」と「不栄則痛(栄養がないために痛む)」です。

 

不通則痛では血流や気のめぐりが滞ることが原因で痛みが生じます。

血流が滞りがちだとチクチクと刺すような痛みが、

気の巡りがストレスや不安・心配などで滞っていると張るような痛みが起きます。

 

いずれの場合も更に冷えが絡むとド~ンと重い、あるいはギュ~ッと絞られるような強い痛みになります。

生理前半のギュ~ッと絞られるような痛みは、まさしくこの冷えから生じた瘀血が原因の痛みです。

この瘀血の原因に正確に対処できる漢方薬を選ぶ事が早期改善につながります。

 

生理後半にシクシク痛む生理痛

生理後半から生じるシクシクと落ち着かない痛みは 不栄則痛の痛みです。

血液の絶対量が不足、あるいは血液の質の低下や栄養成分が不足する事で痛みを自覚します。

 

この場合、不足している「血」や「気」などを補うよう漢方薬を用います。

同時に脾胃や肺の力を改善していくよう働きかけます。

時には気の不足や、血の不足からオ血や痰湿が生じている事もありますので、活血や化痰の生薬を少量加えサポートする事もあります。

 

多くの生理痛がこの2タイプのどちらかに当てはまってきます。

適切に方剤を使えれば相当強い生理痛でも短期間でスッキリ生理が終わるように体質改善することが可能です。

痛みを我慢・放置せず是非漢方を試してみて下さい。


1−2.子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍です。

 

性成熟期(子供が生める年齢)の女性の多くは軽度の子宮筋腫を持つと言われています。

なので小さいものであれば気にする事はないともよく言われます。

 

西洋医学的には子宮筋腫の原因は不明です。

女性ホルモンの影響で筋腫が発育していくと考えられ、生理のたびに大きくなっていく傾向があります。

 

子宮筋腫は、発生する場所によって大きく3つのタイプに分けられます。

最も多い場所は 「筋層内筋腫」 次に 「漿膜下筋腫」 そして最後に 「粘膜下筋腫」 です。

極まれに、子宮頸部にできるケースもあります。

筋層内筋腫

子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていくタイプです。

筋腫の成長に伴い子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされ、月経痛や月経時の出血が多くなります。

また下腹部を触ると硬いしこりが感じられる事もあります。 

漿膜下筋腫

子宮の筋肉の外側にある膜(漿膜)にできる筋腫です。

子宮の外側で大きくなるので、大きくなっても症状を自覚しにくいタイプの筋腫です。

外から触れて分かるほど大きくなっても痛みや月経血などに異常が出にくいため、本人は子宮筋腫と認識していない場合もあります。

粘膜下筋腫

子宮の一番内側の膜(子宮内膜)にできる筋腫です。

発生率は少ないですが、症状は最もはっきりと現れ、かつ不妊症に確実に絡んでくる筋腫です。

筋腫が未熟な状態でも月経過多や不正出血の症状がみられ、時間経過により貧血などによる全身症状を引き起こしやすいタイプの筋腫です。

子宮筋腫がある時の代表的な症状は

 

☑ 月経過多

☑ 月経時に大きなレバー状の塊を排泄がある

☑ 時々不正出血する事がある

☑ おりものが黄色っぽい、またはにおいが強い事がある

☑ 尿失禁や頻尿を自覚する

 

などです。

 

中医学では子宮筋腫の原因として

「瘀血(血流の滞り)」

「気滞(気の巡りの滞り)」

「寒凝胞宮(強い冷えが子宮に定着してしまっている)」

などを考えています。

したがって漢方薬の選択は「活血化瘀(血流を良くし血オを改善する)」や「疏肝理気(肝の働きを調節し気の巡りを整える)」の漢方薬を中心に考えます。

 

そして冷えが強い方には暖める生薬を、血流や気の巡りの滞りから熱が生じてのぼせなどを自覚するような方には生じた熱を上手に捌くための生薬を追加します。

 

あまりにも成長した子宮筋腫に対しては、瘀血の塊を崩していくために、やわらかい塊を潰していく力を持つ生薬を追加することもあります。

 

病院での子宮筋腫の手術は結果が早く得られる反面、筋腫を作った原因体質の治療にはならず治療後も繰り返し子宮筋腫が発生してくるデメリットがあります。

比べて漢方薬は子宮筋腫を作ってしまった体質的なトラブルを考えて改善を行います。

改善に時間が必要にはなりますが、治療ができた後に再発する事が少なくなります。

 

近い将来妊娠をご希望している方にとっては子宮の手術は極力避けてほしいと思います。

病院でのホルモン剤、手術などの治療を受ける前に、ぜひ漢方治療を考えてみてください。


1−3.子宮腺筋症

子宮の筋肉層「子宮筋層」の中に子宮内膜が浸潤し、月経周期に合わせて子宮内膜が筋層内で活動することで炎症を起こす病態を「子宮腺筋症」と呼んでいます。

 

好発年齢は30代~40代といわれ、月経を重ねるごとに痛みの増悪・出血量の過多、期間の延長などが引き起こされてきます。

子宮内膜症と同様、月経時あるいは排卵時の強い痛みが特徴です。

また子宮の筋肉が厚くなってくるためにエコーなどで確認すると子宮が大きくなってくるという特徴があります。

 

痛みの悪化要因としては寒冷・ストレス・疲労などが上げられます。

 

西洋医学的な治療としては外科的には子宮の全摘出、あるいは腺筋症の病巣部位だけの部分切除。

薬物治療としてはホルモン剤による人口的な一時閉経、あるいは消炎鎮痛剤による痛みの治療のみを行う方法などがあります。

 

漢方では、子宮腺筋症が引き起こされてくる主な要因を「瘀血」と考えています。

子宮を取り巻く血流や経絡の流れに寒冷やストレスなどから停滞が生じることで瘀血が生じ、免疫力や体力の低下から子宮内膜症、子宮腺筋症などに発展すると考えられています。

活血化瘀薬(血流を整える漢方薬)を中心に、下腹部の冷えを解消し、免疫力や生理の状態を整えることで痛みや炎症の改善を図ります。

 

病院の子宮腺筋症の治療は一時的に生理を止めて様子を見ることが中心です。

必然的に不妊治療中は子宮腺筋症の治療はできず、ホルモン剤の連用により子宮腺筋症はどうしても悪化します。

 

子宮腺筋症の状態にもよりますが、病院の不妊治療と漢方による子宮腺筋症の対応は並行で行う事も出来ます。

体調を安定させる一助としてぜひ考えてみて下さい。


2−1.子宮内膜症

子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、卵巣や卵管など、子宮以外の部位で発生・増殖する病気です。

 

原因として有力な説は、月経として排泄されるはずの子宮内膜が卵管を通って逆流を起こし子宮以外の部位で癒着する、というものですがはっきりした事はわかっていません。

 

子宮内膜症が最も多く起こるのは卵巣、他にダグラス窩、仙骨子宮靭帯、膀胱子宮窩などです。

子宮内膜症の中で子宮筋層内に内膜が浸潤した結果生じた病変を「子宮腺筋症」

卵巣内に子宮内膜組織が発症し、卵巣内に血液が溜まり卵巣が大きく腫れてくる病変を「チョコレート嚢腫(のうしゅ)」と呼んでいます。

 

癒着した子宮内膜組織は月経周期に合わせて増殖や剥離を繰り返します。

そして病状の進行に伴い、様々な症状を引き起こし始めます。

子宮内膜症の症状で特徴的なものを以下に記載します。

 

◆「強い生理痛」

生理のたびに痛みが強くなっていくこともあります。

鎮痛剤などによる止痛効果が弱く、腹痛だけでなく肛門や下腹部のほうまで痛みが放散していきます。

また、この腹痛は生理時以外、排卵期や生理前から痛むこともあります。

 

◆「月経過多」

一回の出血量が多く、慢性的な貧血状態を呈するほどになります。

月経の出血がだらだらと10日間以上延長したり、不正出血などで不定期に出血を認めたりすることもあります。

 

他に「月経時に下痢をしやすい」「性交痛」などの症状を認めることも多く、心当たりがある場合は一度、専門医の受診をお願いしています。

 

中医学的には「瘀血(子宮・卵巣周囲の血流の滞り)」の改善をベースにします。

同時に子宮内膜症本来の特徴である炎症を抑えられるような漢方薬・生薬を配合していきます。

そしてそもそも子宮内膜症を引き起こした原因が「陽虚(自力で体を温める力が弱い)」や「痰湿(水分代謝の異常)」などにないか判別、その方の体質、症状に応じて対応します。

 

山﨑薬局にも子宮内膜症や腺筋症のご相談は多いです。

個人的には不妊相談の場合であれば、痛みや出血過多などの症状をまず早い段階で改善し、ある程度状態が落ち着いたら疾患の治癒よりも子宝を目指した方が良いと考えています。

 

いずれにせよ、強い生理痛や出血過多など気になる症状があれば、最初に子宮内膜症を検査される事をお奨めいたします

もし検査で子宮内膜症があった場合、手術を除けば病院の治療ではピルを利用して生理を止めてしまう選択肢しかありません。

しかしこれでは子宝を得ることができなくなってしまいます。

 

漢方であれば症状の改善をしつつ、生理周期や体調を整えていくことが可能です。

お悩みの方にはぜひ漢方をオススメ致します。

 


2−2.卵巣嚢腫

卵巣にできる腫瘍全般を卵巣嚢腫とよんでいます。

ほとんどの卵巣嚢腫は良性で、嚢腫が小さいうちは自覚症状もない事がほとんどです。

 

嚢腫がこぶし大ほどの大きさに成長してくると下腹部に張りや張痛、腰痛、嚢腫の圧迫による便秘などが生じます。

大きさは様々のようですが、大きなものでは成人の頭ほど大きさがあり重さも十数kgまで大きくなるものもあります。

大きく成長してくると茎捻転を起こし、激痛や急な吐き気・嘔吐を引き起こします。

捻転による血行不良から卵巣嚢腫が破裂をする場合もあります。

このような症状が現れた場合には緊急手術が必要になります。

 

当薬局においても卵巣嚢腫に対しては多くの場合、先に手術による治療をお勧めしています。

しかし多くの卵巣嚢腫やその原因となった体質に対し、冷えや血行不良、水分代謝などを改善していくことができる漢方薬は効果があります。

 

病院では経過観察と判断される際には漢方薬を試して頂ければと思います。

中医学的には卵巣嚢腫は瘀血・痰湿・陽虚などの証が複合して生じてきます。

弁証論治を行い、その方の体質に合わせて主となる方剤、副となる方剤を組み合わせ対応する必要があります。

 

また卵巣嚢腫は子宮筋腫や内膜症のように強い痛みなどが改善されることで症状の軽重を計れる疾患ではないため、漢方薬の服用を行っていても定期的な婦人科における検査はお勧めしています。


2−3.多嚢包性卵巣

多嚢胞性卵巣とは排卵障害を伴うトラブルの一つです。

13mm程度の小さな卵胞がたくさん形成され成熟卵子まで成長すしないので、排卵や黄体の形成ができなくなります。

 

卵巣に排卵できない卵子が輪になって並んでいる状態がうかがえたり(ネックレスサイン)、血液検査では排卵期以外のときにもLHの数値が高くなっていたりします。

 

生理周期が異常に長い(40日以上の方が多い)。

基礎体温が二層にならないままに出血を繰り返している。

生理周期や出血が周期ごとにバラバラな事が多い。

などが自覚症状として多いようです。

 

自身では気付いていなくとも、潜在的な多嚢胞性卵巣の患者さんの数は相当多いと思います。

 

西洋医学的には多嚢胞性卵巣に対して効果的な治療法というものは今のところありません。

不妊治療では排卵誘発剤を利用して強引に排卵をさせてしまう方法をとりますが一時的なもので状態改善に結びつきません。

 

中医学では、多嚢胞性卵巣の直接的な原因は 「痰濁」 や 「瘀血」 などが原因と考えています。

これらはいきなり体のどこかに生じるものではなく、不摂生や継続するストレス・無理がたたって生まれてくるものです。

状態改善の上で痰濁や瘀血を取り除いていくことはもちろんですが、それらが生じてしまった背景をいかに改善していくかも大事なポイントです。

 

近年 「多嚢胞性卵巣」 と 「インスリン抵抗性」 の間に密接な関係があることがわかってきています。

簡単に表現すれば、血液中のブドウ糖をエネルギーに変えるインスリンが十分働きにくい為に卵胞が大きく成長できず、結果排卵障害につながっている、ということです。

インスリン抵抗性は日本人は民族的に高い方が多く、この事も潜在的な多嚢胞性卵巣の患者さんが多いことの一因になっていると思われます。

現代の西洋化した食習慣などの影響も考えられます。

ご家族や近親者に糖尿病の方がいらっしゃるならなおさら炭水化物や糖などの多い食事は避け、食材などもGI値が低いものを覚えておくのも良いかと思います。

 

 

最近発売された漢方薬や生薬を利用した健康食品で「卵巣のデトックス」と表現できる効果を持つものもあります。

病院のホルモン剤に頼らずともこれらの漢方薬を使う事で生理を起こし、卵巣をきれいな状態に戻すことができる方も増えてきました。

不妊相談の際には、まず多嚢包性卵巣による排卵障害の改善を目標に、妊娠しやすい体作り・体質改善を目指していただいております。

 

多嚢胞性卵巣を完全に元通りの卵巣に戻そうと思ったら長い時間と生活習慣の見直しが必要です。

 基礎体温の変化や病院での検査などから多嚢胞性卵巣が疑われる、または既に診断されている方はぜひ漢方での体質改善をお試しください。


2−4.無排卵

無排卵トラブルのご相談は年々増えているように感じます。

激しい運動やダイエットの後で無排卵状態になってしまった方よりも、病院の排卵誘発剤などのホルモン治療により卵巣が疲弊してしまい無排卵になった方が多いのが実情です。

 

西洋医学的な無排卵・無排卵月経の解説は他のホームページにお任せして、ここでは中医学的な、または店頭のお客様を通して無排卵に関してお話したいと思います。

 

無排卵の状態 

 

ご自身が無排卵であるかどうかは基礎体温表から大体わかります。

きちんと排卵できていれば生理が来る前に一定期間体温が上昇する期間“黄体期”があります。

無排卵の場合、この体温の変化がなく低温期が続いた後で生理が来ます。

低温期のまま体温の変化がない、あるいは36,5℃前後の中程度の体温のまま変化なく生理が来る場合は無排卵である事があります。

 

後発的なトラブルでは多嚢包性卵巣などの排卵が困難になる疾患から無排卵になる事があります。

多嚢包性卵巣の場合黄体化ホルモン(LH)が常時高値になる傾向がありますので血液検査でホルモンの状態を調べるとわかることが多いようです。

中医学的には「痰阻(たんそ)」「腎気不足」などと考えます。

卵巣や卵胞の周囲に排卵を邪魔する要素がたくさんある為にスムーズな排卵が行えない。

あるいは排卵をスムーズに行う為の力がない、ということです。

 

排卵誘発剤などの乱用でもエストロゲンの分泌力が著しく低下して卵胞が育たなくなり無排卵状態になることがあります。

 

上記のような理由がなくても卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)が異常に高い場合も排卵を困難にし無排卵、あるいは排卵後に卵胞が黄体に変化できないために無排卵であった時と同じような基礎体温のグラフになる事があります。

 

中医学的な原因と改善

 

ホルモンのアンバランスが問題になる場合、「腎陰不足」や「血虚」、「肝気鬱結」などその方によって原因が異なります。

基本的には血液や潤いの補充が出来る漢方薬をオススメする形になりますが、病院でホルモン剤治療を行った結果卵巣が疲弊して生じた無排卵だけは一度ホルモン剤の利用を全て休まないと回復は見込めません。

ホルモンバランスが崩れたまま病院の不妊治療を続けても良い結果は見込めませんが、年齢が高い場合は勇気のいる決断であることは確かです。

 

不安のある方は店頭で納得いくまでお話をお伺い頂いております。


2−5.黄体機能不全

黄体機能不全は多くの方に見られます。

 

月経周期の後半、高温期への体温の立ち上がりに日数がかかったり、36.7度以上の安定した高温期が持続できなかったりする事が主な症状です。

 

西洋医学的な正常な黄体期の診断基準は

○高温期の持続  9日以内

○高低の温度差  0.3度以内

○子宮内膜の厚さ 8mm以内

○プロゲステロン検査値 10ng/ml未満

となっています。

これらの条件を満たせない場合、最大の要因は黄体ホルモンの分泌不全です。

 

厄介な事に単純に黄体期に黄体ホルモン補充剤を服用しても、体温の維持には個人差が大きく現れます。

自分でしっかりした黄体を作れる方のほうがホルモン剤の効果も高いように見受けられます。

また服用したホルモン剤の影響が次の月経周期まで及び、卵胞期の基礎体温がだんだん高くなっていく傾向が出てくることがあります。

ホルモン剤治療を何周期か繰り返すと卵巣の腫れや生理周期の乱れを招く場合もあるようです。

 

ホルモン剤による治療で短期間で子宝を授かることもあります。

極々短期間、試してみる治療法としては効果が高いものと思います

 

黄体機能不全の原因は卵胞の成熟不全ではないかと考えています。

元々「黄体」は「成熟した卵胞が卵子が飛び出した後で変化したもの」です。

「卵胞が十分に成熟できていない」「卵子が飛び出した後で黄体に十分変化できない」と黄体機能不全は生じやすくなります。

 

LHサージがゆっくりだと、どの日にタイミングを持てばいいのかがはっきりしません。

また、低温期と高温期の体温差がないと子宮内膜が薄くなる傾向があります。

 

漢方周期療法や、体質改善による卵胞の発育を促してあげられると黄体機能不全に対しても大きな効果が見込めるところです。

黄体機能不全なのではないか、高温期の体温が低いのではないかと不安を抱えてらっしゃるなら、一度ご相談下さい。


いわゆる”原因不明の不妊”と言われている不妊です。

不妊の原因は何も婦人科疾患だけに限りません。

 

最も身近なトラブルは”胃腸虚弱”です。

ストレスや疲労で胃痛や下痢してしまう。

脂こい食事で下痢・軟便がでる。

朝起きる時にお腹が痛い、あるいは日常的にゆるい便が出る。

油ものや肉類などは胃に負担になるので食べないようにしている…

 

自分の体を十分維持できるエネルギーがなければ赤ちゃんは中々授かりにくいものです。

胃に限らず内臓の機能が弱いと自分の体を常に元気で健康な状態に保てません。

自分を維持するだけでギリギリの方が、元気な赤ちゃんを授かる道理がありません。

 

水分も不妊体質を引き起こします

水分を採りすぎている方は足や手、顔に浮腫みを生じ、体がだるくなります。

浮腫むタイミングは様々ですが水分が余っているから浮腫むのです。

浮腫むほど体に水分があるという事は、血液中の水分も増えています。

水分が増えても赤血球や血小板の数は変わりませんので血液は薄くなります。

血液が薄くなれば、内臓は十分な機能を維持できなくなります。

子宮や卵巣も十分な機能を果たすことができなくなってきます。

 

生きるために水分は必要なものですが、自分に必要な量を取るにとどめ、バランスを崩すような過剰摂取は何事も控えたほうが良さそうですね。 

 


3−1.高プロラクチン血症

プロラクチンは脳下垂体から放出され乳腺を刺激して乳汁を分泌させるホルモンです。

本来プロラクチンの血中濃度の正常値はおよそ15ng/ml以下ですが、妊娠に関係なく分泌が亢進し、血中濃度にして30ng/ml以上、乳汁分泌や無排卵月経などを起こすようになったものを高プロラクチン血症といいます。

 

高プロラクチン血症が生じると、卵胞の発育や排卵期以降の黄体の働きにブレーキがかかるようになります。

多くの場合、原因ははっきりとせず様々な要因から引き起こされる事が多い症状の一つです。

店頭でお客様のお話をうかがっている中では、一時的にでも強いストレス環境や忙しい職場などに身をおいた事のある方に、高プロラクチン血症が多いように感じます。

病院では週に一回カバサールなどのお薬を服用するよう処方を受けます。

 

中医学では高プロラクチン血症は主に 「脾胃」 「肝」 「血(けつ)」 の三つの要因が失調して生じてくると考えています。

強いストレスや心配事、精神的な負担が継続すると 「肝」 に蓄えられている 「肝血」が消耗され減少します。

肝血が減少して来ると 「肝」のもう一つの働きである 「疏泄(気の巡り)」も失調します。

疏泄の失調によりイライラや鬱々が強く感じられるようになり、肝の経絡が通っている胸の脇やわき腹の辺りに張っている様な違和感を感じるようになります。(PMS(月経前症候群)もこの肝の失調に深く関連しています。)

疏泄の失調により血液の正常な運行が撹乱されると月経血ではなく乳汁が溢出する傾向が強くなると考えられています。

 

そして血(月経血も含め)と乳汁は、どちらも食べたものが脾胃の働きで化生されたもので元を同じにしています。

ですから乳汁分泌の傾向が強くなると月経血の不足が起き、生理が止まりやすくなってきます。

 

また肝の失調は脾胃に対しても影響し、膨満感やもたれ、便がゆるくなったり胃が痛くなったりなどの症状を引き起こします。

肝の失調はまた 「腎」 の精の減少にもつながってきます。

「精」 の減少は生殖機能の低下に関連してきますので、卵子が成長・排卵できない「無排卵」や基礎体温の二層線の消失に関連してきます。

 

こう並べて考えると強いストレスや抑うつされる環境って怖いですね。

 

漢方薬での症状改善には 「回乳作用」 を持つ生薬が入った方剤を中心に、その方ごとに弁証論治を行い決定していきます。

多くの場合、すでに病院でプロラクチン値改善のホルモン剤を服用されている中でのご相談になりますが、そのままホルモン剤と併用いただいても問題はありません。

ホルモン剤による積極的なプロラクチン値の低下、漢方薬による随伴症状や体質的なトラブルの改善などにより基礎体温もより早く正常化していきます。

特に黄体期に入る際のLHサージ(体温の高温期への移行)がスムーズに行かないなどでお悩みの方は一度プロラクチン値を疑ってみると良いかもしれません。

 

根本的にはたとえストレスを受けるような環境下であっても、

 自分のために使えるのびのびとした時間を定期的にとる事

 食事や睡眠のリズムを整える事(忙しくても週に2日は8時間以上寝る日を作るとか)

 大きな声を出したり笑ったりといった感情の発散を上手に行う事

などが効果的な養生になることと思います。


3−2.子宮頚管粘液の不足

子宮頚管粘液は、おりもの、帯下ともいわれている半透明、やや粘り気のある粘液です。

普段あまり意識されている女性は多くないかもしれませんが、おりものの状態は卵胞・卵子の質の良さとも比例してきます。

また 「子宮頚管粘液」 の呼び方が示すように子宮の入り口部分に質の良い粘液が十分量あれば、子宮内に精子が通っていくための道が広く確保できる事から、妊娠しやすいかどうかの指標にもなります。

 

一般的に月経終了後、少しするとおりものの分泌が増加してきます。

排卵前後において分泌量はピークに達しますが、この際に「卵白様」で「半透明」の粘液が分泌されていればまず問題ありません。

 

中医学では7・5・3の定義というものがあります。

生理の日数が7日であれば排卵前後におりものが特に分泌される期間は5日前後。

生理の日数が5日であればおりものが分泌される期間は3日程度。

生理の日数が3日であればおりものが分泌される期間は1日。

 

もし生理日数と比べて、子宮頚管粘液の分泌日数がこの日数以下だったり、まったく分泌される日が無いようであれば、粘液量が減っている可能性があります。

 

頚管粘液のトラブルとしては、

 やたらと水っぽい多量のおりものが見られる

 黄色味の強い、やや匂いが強いおりものが見られる

 頚管粘液の分泌がほとんどない

等が挙げられます。

これらのトラブルに対し、西洋医学的には特効薬的な対処法は今のところありません。

栄養学的に見てやや不足している傾向がある方には栄養療法を試みてある程度の効果をあげている程度で、しかも全ての方がこの方法で改善できるわけではありません。

 

中医学的にはおりものの異常は主に「腎陰」の不足と考えています。

「腎陰」とは漢方で言う「腎(西洋医学の腎臓ではありません)」の中に蓄えられる体本来の潤い・瑞々しさの事です。

腎陰が不足すると、おりもの以外にも「冬場、肌が白い粉を吹くほど乾燥しやすい」「のどや口が渇きやすい」「目や鼻などの粘膜が乾燥しやすい」などの水分不足の症状が身体各所で見られるようになります。

腎陰の不足が進んでくると「寝汗」「睡眠時に手足がほてる」「日常的にのぼせやほてりがある」などの自覚症状も出てきます。

 

 

また腎陰を補う漢方薬はどれも胃腸に負担をかけることが多いので、自覚的に「私は胃腸が弱い」と感じられている方の場合、一回の量を減らしたり、消化を助け胃腸の働きを改善する漢方薬を併用したりする必要があります。

 

一方、おりものが水っぽい場合は「冷え」や「痰湿」など水分代謝が悪くなっていることが想定されます。

この場合はその方ごとの弁証論治に従い、体を暖めたり、血流や水分代謝を改善しておりものの質を改善していきます。

日常的な生活習慣の中に冷えや痰湿の原因が隠れている場合もあるので、生活習慣のチェックと改善点の確認も忘れてはいけません。

 

最後におりものの黄色味が強く匂いも強い場合、体内に必要以上の熱が生じているトラブル、という理解が一般的です。

しかしこの「熱」が感染症などから引き起こされている炎症=「実熱」か、腎陰虚などから生じる「虚熱」かで、用いる漢方薬が変わります。

時々「熱」というと何でも「黄連解毒湯」を処方する病院がありますが、弁証もせずに用いれば体調はさらに悪化する場合もあります。

また「熱」と「痰湿」が絡んでいる場合も多く、弁証論治を行える漢方薬局にご相談して処方を考えてもらう事が無難だと思います。

 

いずれにしてもおりもののトラブルに対して漢方薬ほど効果を早期に実感していただけるものは他にないと思います。

お困りの方はぜひ一度、お試しになってみて下さい。


3−3.免疫性不妊(抗精子抗体)

抗精子抗体は、何らかの原因で女性の頚管粘液や膣、卵管内に男性の精子を攻撃する免疫が発現してしまう症状です。

入ってきた精子に対して免疫が攻撃を仕掛けてしまいますので、卵子の元まで無事にたどり着く精子は激減、あるいは消滅してしまい自然妊娠できる確立は大変低くなってしまいます。

精子に対する反応以外では自覚できる症状は何もありませんので病院で検査して初めて分かります。

検査はヒューナーテストや血液検査で分かりますので気になる際には受けておくのもよいかと思います。

 

抗精子抗体の原因は西洋医学的にも中医学的にもよく分かってはいません。

免疫的なものですので免疫の感受性が高い方(いわゆるアレルギー体質?)に起こりやすいとか、性交時に子宮や卵管、膣内に出血がある事で精子に対してマクロファージが異物認識を行ってしまう事が原因だとか諸説あります。

出血に関わるとすれば子宮内膜症や子宮筋腫などをお持ちで、不正出血を伴う方に起こりやすいような気もしますが、そういった傾向もないようです。

 

抗精子抗体がある場合、一般的には「抗体価」が低ければ(5%以下)人工授精、「抗体価」が高ければ(20%以上)体外・顕微受精を行います。